書くことからはじめてみよう。

言葉にすることで、何かが変わるかもしれない。

就活日記③ ある人事局長の話(2)

 前回からかなり間が空いてしまったけれど、話の続きを書きたいと思う。

合同説明会で、ある放送局の人事局長と話したこと。

 

 就活で気になっていたことの一つが、「就活生の性格とかって、実際のところ本当にわかるものなのか?」ということ。就活の場では誰だって自分を良いように言うし、仕事に対する熱意も見せる。「自分はこんな人間です」と言い切ることすら(戦略的に)あるだろう。エントリーシートや面接を通して、企業は就活生を判断するわけだけど、そこに現れるのはいわば飾られた、就活用の姿であるような気がする。そもそも人を理解することってそんなに簡単なことじゃないと思うわけで・・・。

 その辺のことって実際分かるんですか?と、その人事局長に図々しくも聞いてみた。答えは半分想像通りで半分意外なものだった。人事局長曰く、入社してから「あれぇ、こんな奴やったんかぁ・・・」と思うことはしばしばあって(これは予想通り)、その割合は感覚としては50%ほど、つまり五分五分(!)ということだった。ちょっと多くないかそれ!?と思ったけれど、実際そうだと言っているのだからそうなのだろう。その人がどんな人であるかなんて、そう簡単には分からないという当たり前の話だともいえる。ここにも「採用は運の要素が大きい」という局長の考えが見て取れる。 

 また、もう一つ気になっていたことがあった。例えば僕がこの人事局長に気に入られて、採用したいと思ってもらったとしよう。しかしどの学生を採用するかは社員一人で決められることではないだろうし、それはおそらく会議などで決められることになるはずだ。では、人事局長が僕のことを採用したいと考えたとして、その考えや理由をほかの社員とどのようにして共有するのだろうか?まさか、それぞれが気に入った学生をプレゼンしあうなんてことはないだろう(「私はこの学生を推します!」「いやいや彼こそが・・・!」と言い合っている姿を想像すると面白い)し、仮にそうであるとしてそのプレゼンで伝わるものなのだろうかという気もする。

 この問いに対する人事局長の回答は明確かつ単純で、というか当たり前のことだった。 

 「もちろん、私一人では決められません。僕一人と仕事するわけじゃないからね。会社にはいろんな人がいて、僕が嫌いなやつもいる(笑)。そういう人とも一緒に仕事するかもしれへんし、その人とは合いませんやったら困る。

 やから何回も面接して、色んな社員が面接して判断するんです。色んな人が見て、それぞれがまぁOK出せるかどうか。やから運の要素が強いね。合わない人に当たって落ちるなんてことがあるから。」 

 ちなみにこの局長は学生時代、別の会社の面接で好きなアイドルの質問に答えたところ、堅物そうな面接官の好みではないアイドルを答えたがために落ちてしまった、と言っていた(堅物そうな面接官がそのような質問をしたというのは興味深いことではある)。 

 こういわれてみると、なるほどだから何度も面接するのかと腑に落ちる。就活生は面接官に認められることを一つの目標にするのだけれど、目の前にいる面接官とだけ仕事をするわけでは決してない。いくらその採用担当が企業の採用の窓口にいると言っても、やはり一人の人間だ。人によって好き嫌いや性格の合う合わないがあるだろうし、それは選考時の判断に大きく影響することになるだろう。もしすべての採用を一人の社員に任せてしまえば、その社員の性格やタイプに偏った人選となってしまうだろうし、またその社員が変な社員を(不運にも)選んでしまわないとも限らない。だから何度も面接を重ねて、多くの社員が就活生と会い、それぞれの判断を積み重ねて内定者を絞っていく。至極合理的な仕組みだ。

 ということは就活生は、それぞれの面接で出会う社員それぞれに「気に入られ」なければならない。つまり、最終面接で出会う面接官に通用する姿さえ準備しておけば、それ以前の予選リーグ的な面接を突破することができる、という訳ではないという事である。様々な興味・関心、考え方、価値観、感受性をもった面接官たちに対して、常に目の前にいる面接官と向き合い、受け入れてもらえるよう努力しなければならない。そうなれば、面接の場では、話すペースや話題の選び方などにも注意しながら、一人の人と相対するという基本的なコミュニケーションを土台にすることが重要である。そしてそれは、総体的にみると結局のところは、就活生のコミュニケーション能力を測る試験になっていると言うことができるだろう。

 

以上が、人事局長から伺った話の概要だ。

というかこれ以上の詳しい内容はもう忘れてしまったので、今日はこのあたりで。